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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Read 江戸三国志 (えどさんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 577,271 characters · 1141 screens

Aozora Bunko

なるほどかれのいう通り、死は易き道で生きるは至難な方角です。その至難をさけて易き死をえらぼうとしたのは、いかにも、卑怯な逃避です。釘勘の伝法ことばを以て評すならば、べらぼう極まる横着な考え方です――そういわれても弁解の途はない。

「悪かった」

やがて、金吾はおとなしく、釘勘の前に両手をついて、

「不覚な上に不覚をかさねるところだった。よく申してくれた」

「えッ、じゃあ、あっしのいう事をきいて下さる?」

「うム、一途に死を急ごうとしたのは拙者の心得ちがい、金吾は死ぬまい。あくまで生き恥をさらすであろう」

「では、手前と一緒に、すぐここから江戸へ帰ってくれますか」

「だが待て……」と、かれは再び苦悶の色をあらわして、

「それだけは許せ! いかに仮面をかぶっても、万太郎様へ今は会われぬ」

「いや、すいも甘いも知りぬいた若様、なんで野暮なとがめ立てをしますものか」

「なんというても今お目にかかるのは金吾の苦痛じゃ、ただよしなにお言伝しておいてくれ、ある時節には、きっと、金吾がお詫びに参じますと――」

「あッ、もし……」

釘勘はあわてながら、どこともなく立ち去ろうとする金吾の影を追って、