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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Read 江戸三国志 (えどさんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 577,271 characters · 1141 screens
声を落として杯を取りましたが、その時その途端に、仕事場の境をガラッと押し開けたものが、
「わッ!」
と夫婦をおどかして、金瞳青眉の般若の仮面を、ヌッとそこから突き出しました。
かっと牙をむいた仮面が、不意に仕切戸を開けたので、野鍛冶の夫婦はびッくりしましたが、足元を見てそれとわかり、
「小僧めッ。親をおどかすやつがあるか」
と半五郎が、むきになって怒鳴りつける。
次郎は手をたたいてうれしがりながら、
「お父ッさんは臆病だな。ひ、ひ、ひ、ひ、ひ」
と腹をかかえて笑いこけましたが、それも仮面に息が掠れて、不気味な奇声となって出ます。
「しようのない餓鬼だ」
半五郎は片目で親らしく睨みつけながら、
「この夜更けに何しに来たんだ、そんな物を被りゃアがって」
「悪いやつを追ッかけて来たんだよ。御隠家様のおいいつけで」
「てめえなんぞに捕まるものか。早く帰ってお嬢様のお気にいることでも考えていろ。あのお屋敷を追ん出されたって、もう家へは入れないからそう思え」
「おいらも家になんか帰りたくねえや」
と、次郎は仮面の目の穴から半五郎の膳をのぞき、小笊の中に食べ残してあるきぬかつぎを見つけて、その皮をむいては仮面の下からムシャムシャと頬張って、