Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Read 江戸三国志 (えどさんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 577,271 characters · 1141 screens
探ってみると封金、百両ほどな厚みです。
金吾の一心はただ面箱を取り返したいことにあって、一瞬、何を考えているまもなかったことでしょう。その金を投げるが如く渡すと、うしろへ身を退いて、一散に河ッ童穴を飛び出そうとしましたが、途端に、
「や、釘抜きッ」
「な、なにッ」
「釘抜き、釘抜きが潜りこんでいやがった」
「畜生」
「逃がすなッ」
というすごい騒ぎです。
グワラン! と岩天井の釣灯りが落ちる。百目蝋燭が火のついたままおどる。争闘です。なぐり合いです。仆れる音、打ち合う喚き、暗澹たる暴風が暗やみの洞窟内に渦を巻いて起ったのです。
ダッ――と相良金吾、一足とびに穴を馳け出して来ましたが、どうやら釘勘が密偵ということを見破られて、袋だたきになっている気配。
「取り返す品を手にしたなら、私にかまわず逃げてくれ、あとは捕手の方寸にあるから――」
とは前もってかれがいい切っていたことではあるが、みすみす群盗の中で袋だだきの目にあっている者を見捨てて、おのれの功にのみ急ぐのは、金吾として甚だ忍び得ない行為に違いありません。
でも、人間は迷う。誰にせよこういう場合は、後に浅ましいと思う迷いをする。