Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Read 江戸三国志 (えどさんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 577,271 characters · 1141 screens
「べらぼうめ、慾にじみちも新道もあるものか、だが、そりゃあそうとして、オイ、馬公」
「なんだと、答えたいが、時に伊兵衛ちょッと待ってくれ」
「おや、いやに改まって、どうかしたのけえ?」
「お前はどうも交際えば交際うほど人を甘くみてよくない性だ、溝店で隣合っていた時代はわしのことを先生と呼んだ。……おまえはな」
「はてネ」
「それから少し親しくなると、馬春堂、馬春堂とよび捨てにしはじめた。――だが、馬春堂ならまだよろしい、しかし、近頃のように、馬公とはなんだい、馬公とは。――いかにわしでも、馬公とよばれてオイと快く返辞はできんよ。ちッたあ人間らしい交わりをしようじゃないか」
「おめえ本気で怒ったのかい」
「あたりまえさ。轗軻不遇というやつで、鼠賊の仲間入りこそしているが、これでもわしの両親は、帯刀御免の名主様じゃった」
「おめえが名主様のお倅だとは今はじめて承知したが、何も、双親まで引ッぱり出して怒ることはあるまい。腹が立つなら堪忍してくんな、おれもわる気で言ったわけじゃねえが、川越以来、お粂がおめえのことをよぶのに、いつも、馬さん馬さんというだろう……あれに染まって、おれもつい、馬公なんて失礼なことばが口ぐせになったというものさ。