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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Read 江戸三国志 (えどさんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 577,271 characters · 1141 screens
「ぜひ、ききいれてもらわねばならぬ」
「やぼじゃありませんか」
お粂は団扇を軽くうごかして、
「二人の仲に、改めてなんて水ッぽいものはないはずです。尤もあなたの方じゃ気が変って一時私を捨てたでしょうがね」
「では、きっと承知だな」
と、不意に金吾は女の腕くびをつかんで置きました。
「まあとにかく、話のすじを聞かしてくださいな」
「ウム、ほかでもない、お前の命をもらいに来たのだ」
「なんですッて」
「命をもらいに来た! それだけで、もう拙者の心は読めているはず。過ぎ去った愚痴をくり返してもしかたがあるまい」
「相良さん、じゃお前さんは、私へ恩を仇にして返すんだね」
「恩を」
「そうじゃありませんか、聖天の黒髪堂で、あなたを助けたのはたれですか」
「言うな、それは」
「いいえ、それから先の看病まで、親身になってつくしたのはたれですえ。……わ、わたしはそのために、日本左衛門という世話になった男を捨ててまで、あなたに女の生涯をみつぎこんだつもりですのに」
臙脂の唇はその毒をかくして、かえって男の心を綿々と怨んでやみません。
毒婦め!
今はあの時の金吾ではないぞ。
心で叱咤しながら、彼は、お粂のきき腕をひき寄せて、