Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
えどげいじゅつろん
江戸芸術論
永井 荷風
Read 江戸芸術論 (えどげいじゅつろん) by 永井 荷風 (ながいかふう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 85,130 characters · 167 screens
細長き画面の上部を二階となし階段によりて男女の相逢ふさまも悪しからず。柱絵は春信の後継者たる湖龍斎に至りますます複雑多様となり、またますます妖艶淫卑の画題を選みき。
春信が板画の彩色はその幽婉なる画題と同じく、あたかも薄暮の花を眺むるが如し。彼は自在に多数の反対色を用ふれども巧みにこれを中和すべき間色の媒介を忘れざるが故に、その画面は一見甚だ清楚にして乱雑ならず、常に軽く軟かき感情を与ふ。ジイドリッツ曰く、春信の用ゆる色は皆曇りたる色なり。彼は色彩の効果をばその対照に求めずして、むしろ影の調和と間色の用法とによりてこれを得ん事を勉めぬ。ペルヂンスキイもまた春信の色彩を以て曇りたる色となし、時としてあるひは平坦に過ぐるの嫌あれども、鮮明にして清楚なる感覚を与ふる力あり。かかる色彩は畢竟幽雅なる趣味性より発するものにして、吾人は一度排列的なる色彩の絢爛に倦むや、此の如き可憐にして高雅にまた親密なる芸術に立返らん事を欲して止まずと論じぬ。
余はフェノロサが試みたる最も専門的なる研究を略述してこの画家の評論を終るべし。春信が明和二年始めて多数の板木を用ゐて錦絵を案出したりし当時の制作は最も上乗のものにして、仏国の浮世絵蒐集家中には特に明和二年板の春信のみを集むるものありといふ。