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うんのじゅうざはいせんにっき
海野十三敗戦日記
海野 十三
Read 海野十三敗戦日記 (うんのじゅうざはいせんにっき) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 83,094 characters · 167 screens
台風気味の低雲をついて、全身を鉛色に塗ったグラマン、二機以上の編隊でしきりに飛ぶ。子供はよろこぶ。
◯天候のため、連合軍の上陸は、四十八時間順延となった由。
◯十七日信州では「陸海軍に降伏なし、日本航空隊司令官」と伝単(※宣伝ビラ)をまいたそうな。
◯井上康文(※口語自由詩で、民衆の現実を描こうとした、「民衆派」の詩人)君の詩、昨二十五日夜放送さる。いやな気がした。われら当分筆を執るまい。
◯中川八十勝君、昨夜郷里広島へ出発。家族は大竹ゆえ、たぶん心配はないと思うが、友人、知己、親戚など広島に多く、この方が気がかりと見える。広島の死者は三万から九万にふえた。負傷は十六万だった。二十五万の広島でこれだけの死傷が一時に発生したのであるから、そのときの惨状は地獄絵巻そのものであったろう。誰かその画を描き、アメリカ、イギリスなどへ贈呈してはどうかと思う。
◯今日は放送二つを聴いて、洗心させられた。一つは陸軍大臣下村大将の「陸軍軍人及び軍属に告ぐ」の平明懇切なる諭(さとし)、もう一つは頭山秀之氏の「新日本への発足」という話で、日本の負けたのは敗戦のはじらいと苦しさを知らざりしによるとなし、この上は堂々と負けて、責任ある支払いをなし、敗戦という宝物を生かして行こうという。