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ゆがしまのすうじつ
湯ヶ島の数日
宮本 百合子
Read 湯ヶ島の数日 (ゆがしまのすうじつ) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,903 characters · 4 screens
十二月三十日。
十二月三十一日。
正月元日。
正月二日
けれども困るので、尺八氏と相談し夜は静にしてお貰いすることとする。
十二月三十日。
越年の客大分立てこんで来た。くに、いそがしがって上気せて居る。子供連多し。くにに「おねえちゃん、御飯まだでちゅか」という男の子の声す。
十二月三十一日。
夜十二時過まで机の前に居る。おなかが空いたが板場は宵に家へ帰ったというので、餅をやき、海苔を巻いてたべる。女中達が、夜なかに吊橋を渡って髪結いに出かける下駄の歯の音だけが、どうやら大晦日らしい。去年の都会的越年とはひどく違う。去年はフダーヤと暁の三時頃神楽坂で買物をした。
正月元日。
朝のうち曇って居たが午近く快晴。くに、奇麗な髪で、おめでとうを述ぶ。自分達も改まった装はしたが一向正月らしからず。山の奥だから何だかぱっとしないのか、宿屋の風がそうなのか。玄関の松飾と女中の髪だけに表象される新年。
正月二日
フダーヤ、都会で生れ、育った人間らしく淋しがること夥し。正月がない、ないと云う。午後散歩。下田街道を天城へ向って村落を通って見、此処の正月のひっそり閑として居るのは落合楼に限ったことでないのを知った。松林が尠い土地柄か、どの家にも松飾というものなし。