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ゆしまのけいだい
湯島の境内
泉 鏡花
Read 湯島の境内 (ゆしまのけいだい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,674 characters · 18 screens
貴方が死んだつもりだなんて、私ゃ死ぬまで聞きませんよ。
早瀬 おお、お前も殺さん、俺も死なない、が聞いてくれ。
お蔦 そんなら、……でも、可恐いから、目を瞑いで。
早瀬 お蔦。
お蔦 …………
早瀬 俺とこれッきり別れるんだ。
お蔦 ええ。
早瀬 思切って別れてくれ。
お蔦 早瀬さん。
早瀬 …………
お蔦 串戯じゃ、――貴方、なさそうねえ。
早瀬 洒落や串戯で、こ、こんな事が。俺は夢になれと思っている。
※(歌記号、1-3-28)跡には二人さし合も、涙拭うて三千歳が、恨めしそうに顔を見て、
お蔦 ほんとうなのねえ。
早瀬 俺があやまる、頭を下げるよ。
お蔦 切れるの別れるのッて、そんな事は、芸者の時に云うものよ。……私にゃ死ねと云って下さい。蔦には枯れろ、とおっしゃいましな。
ツンとしてそがいになる。
早瀬 お蔦、お蔦、俺は決して薄情じゃない。
お蔦 ええ、薄情とは思いません。
早瀬 誓ってお前を厭きはしない。
お蔦 ええ、厭かれて堪るもんですか。
早瀬 こっちを向いて、まあ、聞きなよ。他に何も鬱ぐ事はない、この二三日、顔を色を怪まれる、屈託はこの事だ。今も言おう、この時言おう、口へ出そうと思っても、朝、目を覚せば俺より前に、台所でおかかを掻く音、夜寝る時は俺よりあとに、あかりの下で針仕事。