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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

Read 源頼朝 (みなもとよりとも) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 306,118 characters · 613 screens

Aozora Bunko

吹雪の小やみに、時々、青い月かと思うような空明りが映す。犬のように、宿場端れをのそのそと雪沓で踏んで来ると、

――がさっ。

と、町屋の厩で物音が聞え、馬のうしろで二本の長柄刀の刃が光った。

「……だ、誰だっ?」

すくみ腰は双方でしていた。

やがて、見さだめてから、

「源内じゃあないか」

馬糧の中から出て来たのは、これも宿場の牢人どもで、きょうの布令に、ふだんの懶惰を一蹴して、寒さも睡さも忘れている仲間だった。

「どうだ」

「なにが」

「いい首でも拾わなかったか」

「まだ、まだ」

「はて。……雁ばかり飛んでいやがる」

喞ち合っていた時だった。

その雁の群が、湖畔のほうへ斜めに落ちて行くのをぼんやり眺めていると、三名のすぐうしろを、一騎の武者が、極めて静かに通って行った。

駅路は雪が掻いてある。両側とも廂へまで届きそうな雪の山だった。その雪越しに、馬上の半身だけがちらと見えたのである。

「……やっ?」

「叱」

長柄刀と竹槍は、雪の山へへばりつきながら、後を尾けた。――だが騎馬の武者は余りにも平然としていた。落武者らしい恟々した気くばりも見えないのだ。

「何だろう、あいつ?」