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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

Read 源頼朝 (みなもとよりとも) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 306,118 characters · 613 screens

Aozora Bunko

宗時の答えだった。

父の時政はうなずいて視野へ面を向けている。その間にも、父子三名に従う人馬の列から、乾いた道の埃が、うすく空へ舞っていた。

時政は五十ぢかい男ざかりで、骨ぐみの頑健なことは、息子たちより勝っていた。眉毛が濃すぎて、下賤にさえ見えるが、眼のくぼの眸は、一くせあるものを持っている。――それと何といっても屡、京都へ出て、中央の事情や知識と接しているので、この田舎にその風貌を見れば、どこか垢抜けもしているし、武骨な顔にも知性の働きがある。

「もう間近です。お館の森、狩野川の水、宿場の屋根。はやあれに見えて来ました」

宗時は、指さした。

さぞ、父の眼も、それが懐かしかろうと思われたからである。

「むむ。ウむ」

時政は、うなずく。

見えるかぎりの山河は自分の領地だった。遠く、平貞盛からの末裔として、伊東の伊東祐親と、北条の北条家とで、その勢力は二分していると云ってよい。子はあり、郎党は強し、一族の不和もまずないし、田の刈入れも年々無事だし、今のところ、京都の清盛入道と、六波羅への覚えさえよければ、家門の安泰は保証されている。――自分からより以上を望んで、他の豪族との境をさえ侵さない限りは、彼の不惑をこえた将来は悠悠と、彼の思うとおりに送れよう。