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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens
すると、貴女は、悩ましそうに微笑むでしょうが、たちまちその秘密の歓楽にぞくぞくしてきて、恋の初めの微妙な感情を、心ゆくままに想い起すことでしょう。ですから、シュテッヘの写真を焼き捨てられても、僕の前には、いささかの効果もないのですよ」
「なに、シュテッヘの写真を焼き捨てた……僕は最初から、君の側を離れなかったのだが……」
と今度は、検事が不審そうに異議を唱えると、法水は面白そうに笑いながら、
「だって、どう考えたって、紡車が独りでに廻るという道理はないだろう。それに、理由は後で云うが、艇長は或る奇異な迷信から、自分が『鷹の城』を離れる時刻を決めているんだ。あれには、君も僕も愕っとなったが、しかしすぐ後で、僕は自分の愚かしさを嗤いたくなった。だいたい壁炉というものは、必要のない期間だけ、下の火炉と煙突との間を、仕切りで塞いでおくのだ。ところが、それを焼き捨てた人物は、煙が家の中に、立ち罩めるのを懼れたからだろう。仕切りを開いて、煙突から空中に飛散させたのだ。だから、その後になって、霧が煙突の上を通るごとに、火炉の温い洞との間に、当然還流が起らねばならない。