Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens
それに、じめじめと暮れる西風の日には、塵埃焼却場の煙が、低く地を掃いて匂いの幕のように鎖してしまう。また、島の所々には小沼のような溜りがあって、そこには昔ながらの、蘆の群生が見られるのである。そのそよぎ、群れつどう川鵜の群が、この出島の色に音に荒涼さを語る風物なのであった。
そこで起る当然の疑問は、都心に近いこの港の口に、なぜ、こうも荒れ寂びれた出島があるかということである。
けれども、この「洲蘆の出島」は、もともと仏蘭西大使館の鴨猟地なのであった。現在も、以前の猟館には司厨長が住んでいて、他には、自転車の六日競争の小屋があるくらいである。
おまけに、その二、三の棟が疎らに点在していて、もしも秋の日暮に、私たちがこの島を訪うたとして、海風に騒ぐ茫漠たる枯菅の原を行くとしたら、その風雨に荒れ、繕うこともない石壁の色は、もはやとうていこの世のものとは見えぬであろう。背後の檣も、前にある煙突の林立も、およそ文化といい機械という雑色のなかにあってさえも、この沈鬱の気を和らげるものではない。
ところが、四十町七丁目側の石崖が崩壊して、折角あった、ただ一つの木橋が役立たなくなってしまった。