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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens
いや、すぐ降ろせるように。それから、水樽とビスケットを……」
「だが、本船の危険は、もう去ったも同じじゃないか」
八住船長は、ヴィデが警戒をはじめたのを、不審に思ったらしい。
「とにかく、夜明けまでには、晩香波へ着く。それに、本船には大砲があるのだ。ヴィデ君、君も、砲術にかけては、撰り抜きの名手じゃないか。ハハハハ、出たらグワンと一つ、御見舞申してもらいたいもんだな。なアに、君の腕なら、潜航艇も抹香鯨も同じことさね」
「いやかえって、明日入港というような晩が危険なんです。船長、甲板で葉巻は止めていただきましょう」
と、銜えていた葉巻を、グイと引き抜いたとき、かたわらにいた、無電技師がアッと叫び声を立てた。
「おいヴィデ君、ありゃなんだ?」
そうして一同は、高鳴る胸を押えて、凝視することしばしであった。
飛沫のなかを、消えあるいは点いて……闇の海上をゆく微茫たる光があった。その頃は、小雨が太まってき長濤がたかく、舳は水に没して、両舷をしぶきが洗ってゆく。そうして、ヴィデは部署につき、無電技師は、電鍵をけたたましく打ちはじめたのである。
「危険に瀕す。現在の位置において、救助を求む」