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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens
たしか彼処には、『唐人殺し』に使う、玻璃房の燈籠が下がっていたっけね。彼処で誰か、首を縊っているんだよ。ほら見給え。少し休んで、またやりはじめるだろう。また少し休んで……」
儀右衛門は、それを聴いてハッと顔色を変えたけれども、法水の透視的神経は、黒死館殺人事件一つでさえも、優に十五を数えるではないか。
やがて、横合の廊下まで来ると、そこで儀右衛門は、釘付けされたように立ちどまってしまった。
なぜなら、廊下に向けて開かれてある、硝子戸越しに、ダラリと下った、小六の両手が見えたからである。
そして、口は嚥み込む、何ものかをもの欲しげに、ゲッとばかり開かれているのだ――小六は、左右に玻璃燈籠を吊した、紐に縄をかけて、無残な縊死を遂げているのであった。
「ねえ先生、いったい全体、小六は自分から死のうとしたのでしょうか、それとも、誰かに吊されたのでしょうか」
儀右衛門は、この老侏儒の身体を抱き下しながら、われともなくそう云った。
しかしそれは、まばらな歯並が覗いている、紫色の唇ではなかった。まったく、彼の思考を読み取ることができる、不思議な力でもないのなら、こうも符合したように、小六の死が速急に現われる道理がないのである――ただ一人、それも、あの怖ろしい秘密を解くことができる、ただ一人の男が死んでしまった……。