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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens
その四人は、一人として口を開くものがなく、互いに取り合った手が微かに顫え、なにか感動の極限に達しているのではないかと思われた。彼らは明らかに、これから乗り込もうとする「鷹の城」に恐怖を感じているのだ。
ところが、当の「鷹の城」は、その時岩壁を縫い、岬の尻の入江の中で、静かに揺れていた。
それは水上噸数約四百噸ばかりの沿岸艇で、橙色に染め変えられた美しい船体は、なにか彩色でもした烏賊の甲のように見えたが、潜望鏡と司令塔以外のものはいっさい取り払われて、船首に近い三吋大仰角速射砲の跡には、小さな艙蓋が一つ作られていた。
しかし、そこは断崖の下で、そこへ行くには、岩を切り割った、二つの路を迂廻して行かねばならないのだが、朝枝と外人たちはそこで別れて、いよいよウルリーケと四人の盲人が「鷹の城」に乗り込むことになった。
海底遊覧船「鷹の城」――。しかも、前途にあたって隠密の手があるのも知らず、ふたたび彼らは、回想を新たにしようと濃緑の海底深くに沈んで行くのだった。
司令塔の艙蓋から鉄梯子を下りると、そこには、クルップ式の潜望鏡と潜水操舵器があって、右手が機関室、左手は二つの区画に分れていて、手前のは、以前士官室だった底を硝子張りにした観覧室、またその奥は前の発射管室で、そこに艇長の遺品が並べられてあった。