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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Read 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) by 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 71,989 characters · 144 screens
(二)の七
………」
弁士がこんな事を云って居る間に、見物席へはいやが上にも客が詰め込んで来るらしかった。
(二)の七
やがて、弁士が引込むと、入れ違いに現れたのはメリー嬢であった。其の一刹那、己が彼女から真先に受けた印象は、彼の女の体中に星の如く附着してピカピカと光って居る、無数の宝石類であった。新ダイヤだかガラス玉だか何だかよくは分らないが、兎にも角にも、すらりとした、背の高い彼の女の総身は、栗色の髪の頂辺から純白の絹の靴の先まで、鱗のようにきらきらと閃めく物が鏤めてある。腕と肩とを露わにして、纔に乳房から下の胴体と両脚とを包んで居る真黒な服の地にさえも、其れ等が一面に縫い込んであると見えて、体を捻らせる度毎に、光りの玉が彼方に消たり此方に殖えたりする。
彼の女は活発な足どりで、つかつかと舞台の前面に歩み出で、しなやかな襟頸から肩の筋肉を、蛇に化けようとする人間のように、妙にくるくると波打たせながら、怪しい嬌態を作って、にこやかに見物席を見渡した。その時己は彼の女の顔に、更に二つの素的に大きい黒い宝石が輝くのを一瞥した。二つの大きい黒い宝石と云うのは、それは彼の女の眼球のことである。