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てりはきょうげん
照葉狂言
泉 鏡花
Read 照葉狂言 (てりはきょうげん) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 49,730 characters · 100 screens
二
」
われは小親の名呼ばむとせしが猶予いぬ。何とか言うべき。
「ねえ。」
「あいよ。」
「ねえ、鼠は可愛いんだねえ。」
「じゃあ貢さん家に猫は居ないのかい。」
「居るよ、三毛猫なの。この間ね、四ツ児を産んだよ、伯母さんが可愛がるよ。」
「貢さんも可愛がっておくれかい。」
われは肩掛の中に口籠りぬ。袖面を蔽いたれば、掻分けて顔をば出しつ。冷たき夜なりき。
二
小親の下駄の音ふと止みて、取り合いたる掌に力籠りしが、後ざまに退りたり。鳥居の影の横うあたり、人一人立ったるが、動き出づるを、それ、と胸轟く。果せるかな。螽の飛ぶよ、と光を放ちて、小路の月に閃めきたる槍の穂先霜を浴びて、柄長く一文字に横えつつ、
「来い!」とばかりに呼わりたる、国麿は、危きもの手にしたり。
「何だ、それは何だい。」
われは此方に居て声かけぬ。国麿は路の中央に突立ちながら、
「宝蔵院の管槍よ!」
小親は前に出でむとせず、固く立ちて瞻りぬ。
「出て来い、出て来い! 出て来い!」
といと誇顔にほざいたり。小親わが手を放たむとせず。
「出て来い。男なら出て来い。意気地なし、女郎の懐に挟ってら。」
われは振放たんとす。