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てりはきょうげん
照葉狂言
泉 鏡花
Read 照葉狂言 (てりはきょうげん) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 49,730 characters · 100 screens
電信の柱長く、斜に太き影の横うたるに、ふと立停りて、やがて跨ぎ越えたれば、鳥の羽音して、高く舞い上れり。星は降るごとし。あなやと見れば、対岸なる山の腰に一ツ消えて、峰の松の姿見えつ。われは流に沿うたりき。
岸には推ならべて柳の樹植えられたり。若樹の梢より、老樹の樹の間に、居所かわるがわる、月の形かからむとして、動くにや、風の凪ぎたる柳の枝、下垂れて流れの上に揺めきぬ。
来かかる人あり、すれ違いて振向きたれば、立停りて見送るに、われ足疾に通り過ぎつ。
柳は早うしろの方遥になりて、うすき霧のなかに灰色になりたる、ほのかに見ゆ。松の姿の丈高きが、一抱の幹に月を隠して、途上六尺、隈暗く、枝しげき間より、長き橋の欄干低く眺めらる。板の色白く、てらてらと対なる岸に懸りたり。
その橋の上に乗りたるよう、上流の流れ疾く白銀の光を浴び、蜿りに蒼みを帯びて、両側より枝蔽える木の葉の中より走り出でて、颯と橋杭を潜り抜け、来し方の市のあたり、ごうごうと夜深き瀬の音ぞ聞えたる。
わが心は決らで、とこうしてその橋の袂まで来りたり。ついでなればと思いて渡りぬ。
木津は柿の実の名所とかや。