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かわ

牛をつないだ椿の木

新美 南吉

Read 牛をつないだ椿の木 (かわ) by Niimi Nankichi (新美 南吉) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.

N3 · intermediate · modern kanji and kana · 75,647 characters · 155 screens

Aozora Bunko

四

牛はてまえのおりがなくなると、ひと足進んで、むこうのおりをなめました。

「牛てもな、大酒くらいだなァ」

と村びとのひとりが、ほしいもののもらえなかった子どものように、なげやりにいいました。

「いくらでもええだけたべろ」と和太郎さんは、牛の背中をなでながらいいました。

「ようまでたべろ。よってもええぞ、きょうはおれが世話してやるで。きょうこそ、一生に一ぺんのご恩がえしだ」

ついに牛は、おりをなめてしまい、土だけが残りました。もうあたりはうす暗くなっていました。和太郎さんはまた牛をくびきにつけました。

青い夕かげが流れて、そこらの垣根の木いちごの花だけが白くういている道を、腹いっぱいたべた牛と、日ごろのご恩をかえしたつもりの和太郎さんが、ともに満足をおぼえながらのろのろといきました。

四

さて、和太郎さんも、きょうだけはじぶんがお酒を飲むのをよそうと決心していました。和太郎さんの意見では、牛が飲んだうえに、牛飼いまでが飲むのは、だらしのないことであったのです。しかし、それなら和太郎さんは、帰り道を一本松と茶屋の前にとってはならなかったのです。すこしまわり道だけれど、焼場の方のさびしい道をいけばよかったのです。