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かわ
牛をつないだ椿の木
Read 牛をつないだ椿の木 (かわ) by Niimi Nankichi (新美 南吉) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 75,647 characters · 155 screens
十二、三キロはあるだろう。しかし、みんなのからだの中には、力がうずうずしていた。道は、遠ければ遠いほどよかったのだ。
太郎左衛門も加えて一行は、すぐその場から出発した。家へそのことをいってこようなどと思うものは、ひとりもなかった。なにしろ、からだはつばめのようにかるかった。つばめのように飛んでいって、つばめのように飛んで帰れると思っていたのである。
とんだり、かけたり、あるいは、「帰りがくたびれるぞ」などと、かしこそうにおたがいを制しあって、しばらくは、正常歩で歩いたりして、進んでいった。
野には、あざやかな緑の上に、白い野ばらの花がさいていた。そこを通ると、みつばちの羽音がしていた。白っぽい松の芽が、におうばかりそろいのびているのも、見ていった。
半田池をすぎ、長い峠道をのぼりつくしたころから、みんなは、沈黙がちになってきた。そして、もしだれかがしゃべっていると、それがうるさくて、はらだたしくなるのであった。知らないうちに、みんなのからだに、つかれがひそみこんだのだ。
だんだん、みんなは、つかれのため頭のはたらきがにぶってきた。そして、あたりの光が弱ったような気がした。