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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Read 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 230,599 characters · 458 screens
九月二十二日
九月二十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
九月二十一日 第四十信
きょうは日曜日で日蝕が〇時四十六分一秒からはじまるというので、国ちゃんがガラスをローソクの煙で黒くして太郎も私もそこからのぞきました。真赤な太陽の右下のところから欠けはじめました。
井戸がえをはじめていて、七八人の人が働いていますが、繩をひっぱる女も三人ほど交っています。あの昔きいた井戸がえの一種独特なかけ声をやはり今でもやるのね。職業の声なのね。
市内ではこの頃万一の用心に井戸掘や井戸さらえがあっちこっちで行われて、職人が不足していて、市の近郊の職人がひっぱりだこの由です。井戸をつかえるようにすることや、水洗の厠の外に普通のをこしらえることだの、様々の仕事です。太郎は生れて初めて井戸がえを見て大変珍しそうです。僕手つだっていいかしら。あのつなひっぱると、つな引のときつよくなるんだネなどとやって居ります。
きのうはてっちゃん初のお客によってくれました。私も段々馴れはじめました。いろいろなことが段々気にしないでやれるようになって来て(日常の用事よ。たとえば雨戸しめるということにしろ。