Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
うりのなみだ
瓜の涙
泉 鏡花
Read 瓜の涙 (うりのなみだ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,247 characters · 21 screens
あの低い松の枝の地紙形に翳蔽える葉の裏に、葦簀を掛けて、掘抜に繞らした中を、美しい清水は、松影に揺れ動いて、日盛にも白銀の月影をこぼして溢るるのを、広い水槽でうけて、その中に、真桑瓜、西瓜、桃、李の実を冷して売る。……
名代である。
二
畠一帯、真桑瓜が名産で、この水あるがためか、巨石の瓜は銀色だと言う……瓜畠がずッと続いて、やがて蓮池になる……それからは皆青田で。
畑のは知らない。実際、水槽に浸したのは、真蒼な西瓜も、黄なる瓜も、颯と銀色の蓑を浴びる。あくどい李の紅いのさえ、淡くくるくると浅葱に舞う。水に迸る勢に、水槽を装上って、そこから百条の簾を乱して、溝を走って、路傍の草を、さらさらと鳴して行く。
音が通い、雫を帯びて、人待石――巨石の割目に茂った、露草の花、蓼の紅も、ここに腰掛けたという判官のその山伏の姿よりは、爽かに鎧うたる、色よき縅毛を思わせて、黄金の太刀も草摺も鳴るよ、とばかり、松の梢は颯々と、清水の音に通って涼しい。
けれども、涼しいのは松の下、分けて清水の、玉を鳴して流るる処ばかりであろう。
三間幅――並木の道は、真白にキラキラと太陽に光って、ごろた石は炎を噴く……両側の松は梢から、枝から、おのが影をおのが幹にのみ這わせつつ、真黒な蛇の形を畝らす。