Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
うりのなみだ
瓜の涙
泉 鏡花
Read 瓜の涙 (うりのなみだ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,247 characters · 21 screens
雲白く、秀でたる白根が岳の頂に、四時の雪はありながら、田は乾き、畠は割れつつ、瓜の畠の葉も赤い。来た処も、行く道も、露草は胡麻のように乾び、蓼の紅は蚯蚓が爛れたかと疑われる。
人の往来はバッタリない。
大空には、あたかもこの海の沖を通って、有磯海から親不知の浜を、五智の如来へ詣ずるという、泳ぐのに半身を波の上に顕して、列を造って行くとか聞く、海豚の群が、毒気を吐掛けたような入道雲の低いのが、むくむくと推並んで、動くともなしに、見ていると、地が揺れるように、ぬッと動く。
見すぼらしい、が、色の白い学生は、高い方の松の根に一人居た。
見ても、薄桃色に、また青く透明る、冷い、甘い露の垂りそうな瓜に対して、もの欲げに思われるのを恥じたのであろう。茶店にやや遠い人待石に――
で、その石には腰も掛けず、草に蹲って、そして妙な事をする。……煙草を喫むのに、燐寸を摺った。が、燃さしの軸を、消えるのを待って、もとの箱に入れて、袂に蔵った。
乏しい様子が、燐寸ばかりも、等閑になし得ない道理は解めるが、焚残りの軸を何にしよう……
蓋し、この年配ごろの人数には漏れない、判官贔屓が、その古跡を、取散らすまい、犯すまいとしたのであった――