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まゆかくしのれい
眉かくしの霊
泉 鏡花
Read 眉かくしの霊 (まゆかくしのれい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 26,284 characters · 51 screens
「お客様だよ――鶴の三番。」
女中も、服装は木綿だが、前垂がけのさっぱりした、年紀の少い色白なのが、窓、欄干を覗く、松の中を、攀じ上るように三階へ案内した。――十畳敷。……柱も天井も丈夫造りで、床の間の誂えにもいささかの厭味がない、玄関つきとは似もつかない、しっかりした屋台である。
敷蒲団の綿も暖かに、熊の皮の見事なのが敷いてあるは。ははあ、膝栗毛時代に、峠路で売っていた、猿の腹ごもり、大蛇の肝、獣の皮というのはこれだ、と滑稽た殿様になって件の熊の皮に着座に及ぶと、すぐに台十能へ火を入れて女中さんが上がって来て、惜し気もなく銅の大火鉢へ打ちまけたが、またおびただしい。青い火さきが、堅炭を搦んで、真赤にって、窓に沁み入る山颪はさっと冴える。三階にこの火の勢いは、大地震のあとでは、ちと申すのも憚りあるばかりである。
湯にも入った。
さて膳だが、――蝶脚の上を見ると、蕎麦扱いにしたは気恥ずかしい。わらさの照焼はとにかくとして、ふっと煙の立つ厚焼の玉子に、椀が真白な半ぺんの葛かけ。皿についたのは、このあたりで佳品と聞く、鶫を、何と、頭を猪口に、股をふっくり、胸を開いて、五羽、ほとんど丸焼にして芳しくつけてあった。