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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Read 私本太平記(五) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 252,330 characters · 505 screens
「七郎。こう力押しのくりかえしはこけなことだ。いわば敵の思うつぼに乗っているもの。なにか戦法を変えずばなるまい」
「はや、味方の堀口、大島などは、功をあげたと申すのに、面目もございませぬ」
「いやその山ノ内方面の序ノ勝ちも、小袋坂で食いとめられているのか、あれ以後の捷報も聞かぬ。――仮粧坂口はもとより動きがとれず、また義助にかたくうごくなとも命じてある。なんといたせ、ここを破らねば、一期の大事だが」
「おやかた。一策がないでもございませぬが」
「聞こう。どんな策か」
「この附近の田鍋谷から北へ入って、長谷山へ出て、極楽寺の敵の背後へ突き出でまする」
「いい考えだ。が、義貞もこの辺の姥ヶ谷、田鍋谷などの八方へ兵を入れては間道をさぐらせてみた。しかしいずれも兵馬の通れるような所ではないという」
「いや田鍋谷なら越え行けぬことはないと、三木俊連が申しおります。おゆるしとあれば、三木の一勢が」
「行くというのか」
「望んでおりまする」
「俊連のひきいて来た船手も、かくては用をなしていないな」
「なにせい、わずか九隻。それにくらべ、敵の兵船は大小百余艘もありましょうか。陸において、攻め口を開かぬうちは、船手の者も、突ッこむわけにはゆきませぬ。