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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

Read 私本太平記(五) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 252,330 characters · 505 screens

Aozora Bunko

はい」

「また、鋳物師の艮斎か」

「さ、さようで」

「大工の木曾ノ掾、蒔絵の遠江ノ介、塗師の源五郎。いや居るわ居るわ……鼓打ちの桐作やら仮面打ちの道白までが……。して、なんじらも、家を焼かれて、このあたりの谷の穴へ逃げ隠れておったのか」

「ご執権さま! ……」と、扇絵師の翁と、染革師の老職人が、声をひとつに、おなじことばを泣いて放った。

「な、なんとも、なさけないことに相なりました。申しあげようもございませぬ」

「やい、やい、泣くな」

高時は、どなった。

「おまえらの顔を見たら……おまえらが泣くのを見たら……どうしたことぞ、急にわしも泣きたくなった。泣いていられる場合かわ。戦争なのだ、新田との合戦なのだ」

「わ、わかっておりまする」

「みんな遠くへ行け。とッとと、退散しろ。ここにいては、あぶないぞ」

「いいえ、御所さま!」

また一人がさけんだ。

「この東勝寺は、北条泰時さま御草創の、御菩提所とうかがっておりまする」

「さよう。この高時には父祖代々の廟。それゆえ、おなじことならここを死に場所にせんと、俄に、陣所を移してきたのだ。ここもたちまち敵のつつむところとなろう。はやく去れ」