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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Read 私本太平記(五) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 252,330 characters · 505 screens
本領離るる訴訟人
文書(訴願の)入れたる細葛
追従、讒人、禅律師
下剋上する成り出者
器用の堪否、沙汰もなく
もるる人なき決断所
着つけぬ冠、上の衣
持ちも習はぬ笏もちて
内裏交じはり珍しや
これが革新政府下の社会図だった。その乱脈さを庶民は滑稽とさえ見ていたらしい。
――まな板烏帽子ゆがめつつ
気色めきたる京侍
たそがれ時になりぬれば
浮かれて歩く色ごのみ
幾そこ許や数知れず
内裏拝ミと名づけたる
人の妻ども、浮れ女は
よその見る目も心地悪し
彼女らの辻姿に、戦後の傷はまだそのまま残っていた。そして男は。
尾羽折れ歪む、えせ小鷹
手ごとに誰も持ちたれど
鳥捕る事はさらになし
鉛作りの大がたな
太刀より優に拵へて
前下がりにぞ指し誇らす
婆娑羅扇の五ツ骨
広腰、ヤセ馬、薄小袖
日銭の質の古具足
関東武士の駕出仕
下衆、上の際もなく
大口に着る美精好(織絹の名)
鎧、ひたたれ、なほ捨てず
弓も引けぬに犬追物
落馬は矢数に勝りたり
誰を師匠となけれども
あまねく流行る小笠懸け
在々所々の歌、連歌
点者にならぬ人ぞなき
譜代外様のさべつなく
自由狼藉世界なり
茶、香、十の寄合や
犬、田楽は関東の
滅ぶる元といひながら
田楽はなほ流行るなり