Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Read 花と龍 (はなとりゅう) by 火野 葦平 (ひのあしへい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 410,131 characters · 824 screens
帳面をつけ終った金五郎は、ブリッジのデッキから、はるか下につながれてある、伝馬船の艦に向かって、声をかけた。
「おうい、マン」
マンは、顔を上げて、下から、笑いかけた。
「釣れるかあ?……」
「ほうれ、こんなに」
マンのさしあげた小籠に、十匹ほどの蟹が入っている。針金で縁をつくった丸い網に、イワシの頭を入れ、ラムネの空ビンをオモリにして沈めると、蟹がかかる。
「お前のおかげで、毎日、おかずは買わんですむのう」
「米も一緒に釣れると、まだ、ええけんどね」
上と下とで、そんな話をして笑いあっているのを、艀の舷に、仰むいて寝ころんでいる、角助という仲仕が、憎々しげな横眼で、睨んでいた。
まさか、顔の形から名をつけたのでもあるまいが、角助の顔はほとんど四方形である。色が青黒く、頬骨がつき出ていて、唇がひどく厚い。髯の生えかたがまばらで、不潔な雑巾のような感じがする。四十をいくつか過ぎていようか。魯鈍と、陰険と、残忍さとが、犯罪者じみた顔に、露骨にあらわれている。
(生意気な新参野郎奴)
と、その白濁した眼は、あきらかに、そういっていた。
永田組に、平尾角助は、もう、五年以上いる。