Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Read 花と龍 (はなとりゅう) by 火野 葦平 (ひのあしへい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 410,131 characters · 824 screens
勝則は、深くうなだれた。唇を噛んだ。それでなくてさえ、むし暑い晩なのに、勝則の額には、内心の苦渋から湧く油汗が、じとじとと、浮いて流れた。
短い沈黙の時間が過ぎる。
「お母さんには、隠さないでね」
その言葉に、はねかえるように、勝則の口から、苦しげな声が出た。
「すみません」
「知っとるんじゃね」
「はい、知っています」
「光丸さんは、どこに居る?」
「博多に居る筈です」
「筈、というのは?」
「そういう約束で、家を出たからです」
「隠れるために逃げたのね?」
「ええ」
ここまで来れば、勝則の覚悟も定まっているらしく、母の問いにたいして、なんのためらいもしなくなっていた。そして、裁判官の訊問の口調も、きびしいながら、どこかに、被告の感情をいたわっているようなところが、いつか、出ていた。
「光丸さんが逃げて、博多に隠れるということ、お前に連絡があったの?」
「わたしたちが、逃がしましたのです」
「わたしたち?……たち、というのは?」
「みんなで、寄ってたかって、逃がしたものですから……」
「みんな? お前一人ではなかったんじゃね」
「はあ」
「誰と誰? 話してごらん」
勝則は、ちょっと、下唇を噛んで、思案していたが、思いきったように、顔をあげた。