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わかあゆのきひんをくう
若鮎の気品を食う
北大路 魯山人
Read 若鮎の気品を食う (わかあゆのきひんをくう) by 北大路 魯山人 (きたおおじろさんじん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,111 characters · 3 screens
ぜいたくにと、ひと口に言っても、上には上、下には下の段々がある。若鮎を賞味できる人というのは上の上に属する。丹波の秀山、和知川などの若鮎と来てはたまらない。
第一姿のよさに魅せられる。すばらしい香気に鼻がうごめく。呑口は一杯やらずには納まらない。頭から尾先まで二寸から二寸五分というくらいの大きさが若鮎の初物で、その小味はたとえようもない。若鮎には気品の高さというものがある。その気品の高さは出盛り七、八寸――一人前の鮎に較べて問題でないまでに調子の高さがある。口ぜいたくを極めた後に初めてわかる味である。
金串の極小に刺して、塩焼きにするのはふつうのことで、これを生のまま赤出しに入れて、若鮎の味噌汁をつくる。温室の蓼を添えてもよし、皮山椒をひと粒入れるもよい。
鮎は頭から尾先まで余さず、ひと口かふた口に食う。鮎のわたの苦味は、また格別の風韻が口に美しく残る。流れのにぶい川の鮎は、肉がでぶでぶしていて不味い。川瀬のはげしい水の美しいところにいるものでなくては、ほんとうの鮎とは言えない。東京近くでは若鮎ならば酒匂川の下流が割合によい。多摩、厚木などのものは、私どもの口に合わない。