Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
おちばのとなり
落葉の隣り
山本 周五郎
Read 落葉の隣り (おちばのとなり) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 28,877 characters · 57 screens
「まあとにかく茶を淹れよう」
繁次は口をつぐんだ。
――なにかあったな。
そう思いながら、ふと脇にある机のような物に、片肱を突いて倚りかかった。唐草の風呂敷が掛けてあるからわからないが、倚りかかった感じは机のようであった。
「あ、ちょっと」とすぐに参吉が云った、「そいつはいけねえ、そいつに触るのはよしてくれ」
繁次はすぐにはなれた、「うっかりしてた、机のようだな」
「机じゃあねえんだ、いま見せるよ」
参吉は茶を淹れて来て坐った。
茂兵衛の好みだろうか、小ぶりな茶碗も高価な品のようだし、茶の味も繁次には初めての、びっくりするほどうまいものであった。こんな裏長屋などで茶らしい茶を飲む家はない、もちろん高価だということが第一だが、食うことに追われている生活では、おちついて茶をたのしむなどという心のゆとりがなかった。茶といえばふけたような匂いのする安い番茶で、それを色の出なくなるまで淹れて使うから、白湯を飲むのとさして変りがなかった。
参吉は茶を一と口啜ると、机のような物に掛けてある風呂敷を取った。
「おれが作ったんだ」と参吉は云った、「――どう思う」
繁次は坐り直した。