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あしはみていた
葦は見ていた
山本 周五郎
Read 葦は見ていた (あしはみていた) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,985 characters · 36 screens
生活はぎりぎりまでゆき詰った。
「そのとき女がうちあけたんだ」と計之介は云った、「はじめは泣くばかりで、どうしても云わなかったが、おれがせめにせめたら、――もうこれで逢えない、自分はほかの土地へくら替えしなければならないのだと云った」
計之介は初めて女の借金を知った。
江戸から来て一年半ばかりの期間に、女は背負いきれないほどの借金をつくっていたし、もう延ばせない期限が来ていた。金を返すか、他の土地へくら替えするか、どちらかにしなければならなくなっていた。
――よし、金をつくろう。
計之介は云った。
――その金をきれいにすれば、おまえの躯は自由になるんだろう。
――そうして江戸へ帰れと仰しゃるの。
――金をつくってからだ。
――あたしをくら替えさせて。
――おれに金がつくれないと思うのか。
――お願いだからくら替えをさせて。
そんなに遠い処ではないからくら替えしても逢えないことはない。むしろ土地が離れるから、気兼ねなしに逢えるだろう。おひさはそう云った。しかし彼にはそうはできなかった、彼のために江戸をぬけ、彼のためにそんな借金を負わせて、それで黙って見ていられるものではなかった。