Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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あしはみていた

葦は見ていた

山本 周五郎

Read 葦は見ていた (あしはみていた) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,985 characters · 36 screens

Aozora Bunko

「眼がさめたのは夜半すぎだろう、夢のなかで思いだしたらしいが、眼がさめるとすぐに漢鏡のことに気がついた」

「なかったんだな」

「なかった」と計之介が云った、「捜しにゆくと匣だけはあったが、中の漢鏡はなくなっていた、もう疑うまでもない、逃げたということがはっきりわかった」

それは計之介に残された、たった一つの金めな品であった。伝来の家宝であり、高価に売れることも女は知っていた。

「あいつはおれを搾れるだけ搾った」と計之介は云った、「そうして、もうおれから搾るものがなくなり、家名の存続も危なくなったので、それだけは残しておいた鏡を持って逃げたのだ」

「まえの晩、――」と東次郎が云った、「深江のことが話に出たからではないか」

「いや、深江さんのことはまえから知っていたんだ」

もう話すことはなかった。

「おれは自殺しようと思った」

「それ以上のことをしたよ」と東次郎が云った、「藤吉は約束どおり観音寺の丘へ来た、そして事実をありのままにうちあけた、これは勇気がなくてはできないことだ」

東次郎は二つの盃に酒を注ぎ、「いっしょに持ってくれ」と云った。

「この経験を活かしてくれ」