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われはうたえども やぶれかぶれ
蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ (われはうたえども やぶれかぶれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,726 characters · 90 screens
そこでもまた電灯がかっと点く、節マリ子は四年も手伝ってくれている少女だが、奥テル子は二年近く一緒にいて私の身の廻りのことをしてくれる少女、二人に私は夜中には起きてくれないように言って置いた。たいがい、あそこにいる時間は短かくても三十分はかかるのだ。今年は雨ばかりで軽井沢の夜気は冷たい、その間じゅう起きていて貰うことはからだが冷え切って了う。だから起きないようにいうのだ。私は三十分ばかり跨っていても、とても出ないことが判ると、最後の方法として庭に出て後ろ山の石垣下にゆくより外に、行く処がない、私が三尺土間をまた飛び越えると間もなく奥テル子の部屋の電灯が消え、化粧の間を抜けると節マリ子の電灯も消えた。そして私は書斎にもどると烈しい咳にたたみ込まれ、腹を折ってそれを耐えてから立って雨戸を一枚明けると、用意してある草履に足を突っかけ庭に下りた。全身の蒼白が額にあつまって汗を掻いている。心にある熱い焦りが外の冷気もなにも感じないくらいである。
石垣の石につかまり跼みながら一呼吸いれると、あれほど閉じていたやつが少量ではあったが、黒い土のうえをもっと黒く沁みこんで放出されることを知った。