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われはうたえども やぶれかぶれ
蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ (われはうたえども やぶれかぶれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,726 characters · 90 screens
勿論、顔もおりおりは湯舟の中でお洗いになって対き合っても、そんなことは一つも気にしないふうだったと、山本さんは言った。からだの色は白い方であったが、それほど痩せていない方で肩のつけねやお腹にはたっぷりした白い肉があったと言い、あれだけ肉づいていたからやはり持つだけ持っていた病気だったのでしょうと山本さんは言った。
私はこれらの宇野君の生きたすがたを聞いてから、これは書きのこした方が後の日のために読む人があったら宜いことだと思った。そして湯舟の中で頭をしずめても宇野の場合は少しもきたない気がしないで、さぞ、ぬくぬくと好い機嫌をさそう温かさであったろうと思った。卑俗幼稚な物のくらべ方を私はしたくないが、宇野の文章というものに身体をみがいていることに似た、そんなみがき方があるような気がして此の隠れたくせの宇野浩二をいまはひたすらに想うのである。大阪の生れで明治の人である彼は何時も下町の町人サムライのぴかりとした風格があった。腕を組んで坐り工合の姿勢のよい彼は余りに後進の若い人達の作品を熱読して、読売文学賞とか芥川賞の折にはどの作家よりも沢山に読んでいる人であった。