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われはうたえども やぶれかぶれ
蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ (われはうたえども やぶれかぶれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,726 characters · 90 screens
他人の物を読みすぎると自分の狭さがきゅうくつになり、つい書くことをあと廻しにすることがあるものだが、宇野にそんなことはなかったか。それとも当然我々が書けないところに趁いこまれる時期があって、早くも宇野にそれがやって来ていたのではなかったか。
宇野浩二が長期に亘って何も書かないでいるのは、書いているよりも苦しいことだろうと私は遥かに思うていた。宇野が書き出すとしたらどのあたりを突き破って出るのかと、ひまのある寝ざめの床でそれをおもうていたが、結局、今までの集大成を盛り上げるそれが一つのきっかけとなりはしないかと、会って話の工合がうまく運んだ時に進言するつもりで私はいた。ともあれ彼は私をヒイキにしてくれる同輩の一人であることが、客あれば宇野浩二を物語ってねぎろうていたわけである。
今、この東京新聞の文芸欄に眼を戻して見れば、再び保高の徳蔵さんは、ああ、宇野浩二君という見出しを私の眼の前に差しつけ、君は病院の寝台の上にそうやってああの、こうのと我儘を振り廻しているが、宇野浩二も何処かに入院加療していればもっと持つ病いだったか知れなかったのだ。それを奥さんがどんなにすすめても聞き入れなかったそうであった。