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われはうたえども やぶれかぶれ
蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ (われはうたえども やぶれかぶれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,726 characters · 90 screens
病院にいてもこんな時間に隙間もない生活をしていたら、何処にいったら一たい息をつける処があるのだろう、その間に三回目の午後の注射があったり採血試験に化学注射の日が廻って来て、一日三回の検温するひまもわすれがちな忙殺の暮しであった。私は体温計を脇の下にはさみ込みながら、遅れた検温を飯をくいながら試みていて初めて病人という奴には生きるか死ぬかの忙しさがあるので、その忙しさがつみ重なった向うに生きる者と、そうでないものらが区別される処があるのだ、死ぬにも、生きるにも人間はひまでいるわけにはゆかない、もっとも沢山に生きようとするにも、もっとも多くの忙しい目にあわなければならないのだ、けれども、私自身は何が何やら区別も出来ないまま今はこの生きた鯉の裁判からしてかからねばならなかった。鯉はその習性から一躍すると床の上一面に飛沫を打っかけ、私は寝台の上から彼がついに床の上にまで飛び上がるかも知れない予感で、何時でも下りられる用意までしてかかった。病院に鯉を持ちこむとは、何度言っても同じことだが、一体これはどういう気であろう。
私の癇癪と局部の疼きはこれらの電話の取次ぎで、心理的に一層いらいらしくなりブザーなぞ押すもんかと叫ぶように言い、この間に見舞客があるとその人の顔がかすんだように見え、この前より余程お元気になられまし