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みつのあわれ
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (みつのあわれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,662 characters · 174 screens
」
「お顔の色が曖昧だわよ、気を附けて、誤魔化そうとしていらっしゃる。おじさまは、そんな時には、眼をあたいからそっとお外らしになるもの。」
「もう、此処を出ようじゃないか。」
「白状しなきゃ出ないわ、何時までも、坐っててやる。」
「じゃ、きみ一人いたまえ。僕はもう帰るから、給仕さん、勘定して下さい。」
「とうとう、白状しなかったわね、じゃ、あたいも、或る女の人に会ったこと言ってやらない。」
「誰に会ったの、廊下かね。」
「そんな事いう必要はないわ、おじさまが言わないのに、誰がいうもんですか。」
「例の講演会であった人の事だろう、きみの知っているのは彼の人の外には、凡そ人間のうちで誰も知っていない筈だ、どうだ当ったろう。」
「巧くお当てになったわ、以心通じるものがあるのね、あの方、突然、廊下であたいを呼び止めたの、おじさまが来ている事、ちゃんと知っていらっしったわ。」
「僕には逢いたくないと言っていただろう。」
「あんまりお逢いしたい時には、逆に人間は逢いたくないというものらしいわ、それでいて、逢わないで帰ってゆくのは、なんとも言えないつらい気分があるらしいわ。」
「どんな顔色をしていた。