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みえざるてき
見えざる敵
海野 十三
Read 見えざる敵 (みえざるてき) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 7,777 characters · 16 screens
上海四馬路の夜霧は濃い。
黄いろい街灯の下をゴソゴソ匍うように歩いている二人連の人影があった。
「――うむ、首領この家ですぜ。丁度七つ目の地下窓にあたりまさあ」
と、斜めに深い頬傷のあるガッチリした男が、首領の袖をひっぱった。
「よし。じゃ入れ、ぬかるなよワーニャ」
と、首領と呼ばれた眼玉が魚のように大きい男は、懐中からマスクを出して、目にかけた。
合図の数だけ入口を叩くと、重い木製の扉が静かに内に開いた。
前室を通って、次の部屋にとびこむと、ここはガランとした広間だ。
ガランとしたこの室には、中央に大きな古い卓子が一台。そのほかには隅に背の高い衝立が一つあるばかり。
「おお、――」
と声があって、その衝立のうしろから現われた異様な人物。長い中国服を着、その上に白い実験衣をフワリと着ている猫背の男だった。頭髪も髭ものびっぱなしで、顔の中から出ているのは色の悪いソーセージのような大きな鼻だけだった。両眼の所在は、煙色のレンズの入った眼鏡に遮られて、よくは見えない。服装や身体つきから見ると、中国人らしいところもあるが、大きな鼻や深い髭から見ると西洋人のようでもある。