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おつきさまのうた
豊島与志雄童話集
豊島 与志雄
Read 豊島与志雄童話集 (おつきさまのうた) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,569 characters · 336 screens
そして一度降り出すと、まるで天の底がぬけたかと思われるくらい、二日の間、大降りに降り続きました。
川の水はいっぱいになり、水田にはたっぷり水がたまり、畑の土は黒くしめり、作物は生き返ったように伸び上がりました。そのありさまを、雨の後の晴々とした日の光の中に眺めた時、村の人々は涙が出るほど喜びました。
「これもみんな鎮守様のお影だ」
そう言って、皆は鎮守の社で御礼の酒盛をしました。それぞれ出来る限りのごちそうをこしらえ、赤の御飯をたき、金持ちは大きな酒樽まで買ってきて、まず第一に鎮守様に供え、それから、皆で、飲んだり食べたり歌ったりしました。
その酒盛の一日がすむと、皆田畑に出かけて勇ましく働きだしました。
二
その村に、徳兵衛という男がいました。ひとり者で、少し薄馬鹿ななまけ者で、家を一軒もつことが出来なくて、村の長者の物置小屋に住まわしてもらっていました。
鎮守の社で雨の御礼の酒盛があった翌日の朝早く、徳兵衛は長者の言いつけで、肴を入れた籠と大きな酒の徳利とをさげて、鎮守様に供えに行きました。
そして、村はずれの森の中の、鎮守の社の前まで来ますと、びっくりして立ち止まりました。