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あかごうしくろうえもんのむすめ
赤格子九郎右衛門の娘
国枝 史郎
Read 赤格子九郎右衛門の娘 (あかごうしくろうえもんのむすめ) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,174 characters · 33 screens
卜翁は忠蔵の死骸をお袖と一緒に寝かせて置いて自身玄関へ出て行った。
「何人でござる?」と忍音に問う。
「西町奉行手付の与力、本條鹿十郎と申す者。至急ご主人に御意得たく深夜押して参ってござる。ここお開け下されい」
「それはそれはご苦労千万。拙者すなわち卜翁でござる」
こう云いながら戸を開けた。
「いざこなたへ」と自分で導き、玄関脇の部屋へ通す。
「ご用の筋は?」と卜翁は訊いた。
「実は」と本條鹿十郎は、声を低く落しながら、
「住吉の海上におきまして海賊船を見付けましてござる」
こう云って卜翁の様子をうかがう。
「何、住吉の海上で海賊船を見付けたとな。それは何よりお手柄お手柄。して勿論海賊船は取り抑えたでござろうな?」
「それが……」と本條鹿十郎は、云い悪くそうに云うのであった。
「取り逃がしましてござります」
「なに逃がした? 逃がしたと仰有るか? 怠慢至極ではござらぬかな」
志摩卜翁は嘲るように白髯を撫しながら云うのであった。
「しかし」と鹿十郎は自信あり気に、
「海賊船こそ取り逃がしましたが、主立った海賊を二三人召捕りましてござりますれば、そやつ等を窮命致しましたなら自ら行衛は知れましょう。