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そらとぶあくま
酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕
酒井 嘉七
Read 酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕 (そらとぶあくま) by 酒井 嘉七 (さかいかしち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,471 characters · 28 screens
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は交換されたのである。
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三機は編隊で離陸した。一番機は沙里子だ。ほど近く航空標識の緑白紅、三連閃光が、正しい十秒の間隔を置いて、星ばかりの暗い夜空を衝きさしている。私は、彼女の唇を思わせるような、一番機の真赤な尾灯を、じっと見つめながら、注意深く操縦棹を握っていた。左翼が清川、右翼が自分だ。
「沙里子さん、封を切りましたか」
私は無電の送話器に口をあてて、彼女に話しかけた。彼女の声が、受話器に聞えた。
「まだですの。も少し昇ってから見る方がいいでしょう」
「そうですね。少し高度を取っておく方が、どの方向へ飛ぶにしてもいいでしょう。ね、清川君――」
「そうだ」
彼の声が聞えた。三機は編隊のまま、ぐんぐんと昇って行った。
「封を切りますよ」
沙里子の声だ。
「……おや短歌よ。とても日本趣味ね、万葉集の歌らしいわ。読みますよ。お二人とも聞いていて頂戴。――牽牛と織女と今夜逢ふ天漢内に波立つなゆめ……」
「天漢内に……」
清川の声が聞えた。
「それじゃ、漢内飛行場ですね。坂君、そう考えないかい」
「そうだろう、そうに違いない。あれは伊吹山の山麓に、新しく出来た飛行場だったな」