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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Read 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,625 characters · 26 screens
――さいでげす。今の先刻坂本町の巣を出やしてね、いつものとおり味噌売りに歩くべえと、箱取りと仕入れにこの家へ来て、まっすぐに蔵へ行った折り、坂本町から横町へはいるあたりからやに土が柔かくて、御覧のとおり右手から蔵まであんな足形を印けやした。へえ、正しくありゃああっしの跡でごぜえます。」
「箱取りに、まっすぐに蔵へ行ったたあ何のこってすい?」
「担ぎの荷箱を蔵へ預けといて、毎朝自身で出してお店へ廻って味噌を仕入れるのが、親分の前だがあっしとここの店との約束でげしてね。」
「なるほど。して、朝お前さんがくるころにゃあ、お店じゃいつも起きてますのかえ? 七つと言やあこちとらなんかにゃあ真夜中だが――。」
「なんの。きまって長どんを叩起しますのさ。」味噌松は他意なく続ける。「それが親分、今朝あ騒ぎだ。なにしろあの暗え中で旦那の体にけつまずいた時にゃあ、さすがのあっしも胆を潰したね。へえ、それからすぐとお内儀を起して蔵へつれてって、小僧二人を親分とこと、こりゃあまた余計なことかもしれねえが、桜馬場へもね、へえ、走らせやしたよ。」
「駒蔵さんさえ見ればすぐ片がつくだろうて。