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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Read 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,625 characters · 26 screens
「だが、現場は離れた蔵だのに、足形付けずにどうして間を――。」
「板が倒してごぜえましたよ。板が。」
「大きにそうだ。雨の前から来ていて、帰って来る旦突を蔵へ誘入れ、仕事すまして板伝い――か。」
「板伝いにこの母屋へ! 親分、臭えぜ。」
「やいっ。」藤吉はおみつを白眼めつけた。
「阿魔っ! 亭主殺しゃあ三尺高え木の空だぞ。立て立たねえかっ!」
「親分、何を――。」
おみつは不思議そうに顔を上げる。
「白々しい。覚えがあろう。立てっ!」
「すまねえが親分の鑑識違えだ。」味噌松が仲へはいった。「ま、考えても御覧なせえ。お神さんの腕力であの鉞が――。」
「なに?」
「いやさ、あんなに頭が割れるかどうか――。」
「うん。そう言やそうだの。こりゃあ俺が早計ったか。」
呆然として藤吉は腕を拱いた。
「ねえ、親分。」と味噌松は低声で、「実のところ、早速に小僧を走らせようとしたら、このお神さんがの、それにゃあ及ぶめえだの、も少し待ってくれのって、へえ、大層奇天烈なあわてかたでしたぜ。足形のねえ工合いと言いこの言草といい、わっちはどうも昨夜降る前から泊込みの野郎があると――。」
「松さん、あまりなことをお言いでないよ。