Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Read 銀座復興 他三篇 (いさん) by 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 40,579 characters · 82 screens
一郎が友達を誘ってホテルに出かけて行く姿を、いつもならば苦々しく思うはずなのに、その日は同情にみちた微笑をもって見送った。
夕方の浜辺を散歩する人の数もめっきり少なくなって、甲子を真先に、少し遅れて乙子と養子がつづき、最後に澤が、前に行く三人の後姿に興味を持ちながら歩いて行った。ホテルの涼場の下を通って、稲瀬川のそばまで行くと、別荘の屋根が見える。そこまで行って、女達は砂の上に腰を下した。
「澤さん、休め。」
養子が大きな声で号令をかけたので、姉妹は声を揃えて笑った。
「えんやらやっと。」
澤もあかるい気持で冗談をいいながら、昼間のぬくもりの残っている砂の上に両足を投出した。
磯の日細りて更くる夜半に
岩打つ浪音ひとり高し
かかれるとも船人は寝たり
誰にか語らん旅のこころ
細く高い三人の肉声が、誰が始めたともなくうたい出した。澤はその傍で、初秋の澄んだ海気を吸いながら、誰でもいいから心から親しめる人のほしい、孤独感に瞼が熱くなりながら、星の出た海の上の空を、じいっと見つめていた。
四人が別荘に帰ったのは、すっかり夜になってからだった。あかりの下で、めいめい勝手な雑誌を読んだり、編物をしたりしているのを、縁側の籐椅子に長くなって、澤は見ないようなふりをして見ていた。