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に、さんば――じゅうに、さんば
鏡花短篇集
泉 鏡花
Read 鏡花短篇集 (に、さんば――じゅうに、さんば) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 33,305 characters · 66 screens
と飛んで虫を退治た。また、冬の日のわびしさに、紅椿の花を炬燵へ乗せて、籠を開けると、花を被って、密を吸いつつ嘴を真黄色にして、掛蒲団の上を押廻った。三味線を弾いて聞かせると、音に競って軒で高囀りする。寂しい日に客が来て話をし出すと障子の外で負けまじと鳴きしきる。可愛いもので。……可愛いにつけて、断じて籠には置くまい。秋雨のしょぼしょぼと降るさみしい日、無事なようにと願い申して、岩殿寺の観音の山へ放した時は、煩っていた家内と二人、悄然として、ツィーツィーと梢を低く坂下りに樹を伝って慕い寄る声を聞いて、ほろりとして、一人は袖を濡らして帰った。が、――その目白鳥の事で。……(寒い風だよ、ちょぼ一風は、しわりごわりと吹いて来る)と田越村一番の若衆が、泣声を立てる、大根の煮える、富士おろし、西北風の烈しい夕暮に、いそがしいのと、寒いのに、向うみずに、がたりと、門の戸をしめた勢で、軒に釣った鳥籠をぐゎたり、バタンと撥返した。アッと思うと、中の目白鳥は、羽ばたきもせず、横木を転げて、落葉の挟ったように落ちて縮んでいる。「しまった、……三太郎が目をまわした。」「まあ、大変ね。