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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
Read 雑居家族 (ざっきょかぞく) by 壺井 栄 (つぼいさかえ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 140,106 characters · 283 screens
聞いてちょうだいよおねえさん、わたし妊娠してんですよオ、どうしたらいいのさア。」
音枝はいきをのんだ。感情が凝りかたまってしまったようで、言葉がでない。それをつきくずすように浜子はつづける。
「――わたしが、どこのだれかわかんないやつの子をうむっていうのにさ、おねえさん、だまってるんですかア。わたしはお金がないから、始末できないのよオ。おねえさんたら、産んでもいいんですかア。」
音枝はやっと自分をとりかえし、
「浜ちゃん、それ、ほんとなの。」
すると浜子は大きな声で、
「なんで、うそいうのさ、おねえさんのばかア。」
「もっと小さい声でわかるわよ。進君や冬太郎にきこえるじゃないの。」
「生れつきの野声だもん。それに進君は知ってますよ。ぶちまけて、助けてもらおうと思ったのに、だめなのよ。おじさんにおっつけて、おばさんをてんてこまいさせちゃおと思ってたのに、おねえさんたら白状させてしまったじゃないかア。わたしになにもかもいわしてしまったじゃないかア。助けてくださいよ。おねえさーん――」
その一言一言を悪魔の声と聞きながら、平和だったわが家が汚され、こわれてゆく姿をまのあたりにみる思いの音枝も、その悪魔の叫びの底に流れる純真さに気づくとほっとした。