Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
Read 雑居家族 (ざっきょかぞく) by 壺井 栄 (つぼいさかえ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 140,106 characters · 283 screens
心細い兵六さんの声に、おせいは気のとがめを見せた表情で、
「そんなこといわないでくださいよ。ひと月したら、いやでももどってくるんですから。」
「そうかい。そんなら、ゆく先はちゃんと書いといてくれよ。どんなことが起らんとも限らんもんな。」
兵六さんは思わず目をうるませていた。こんな風にしておいてきぼりをくった兵六さんだったが、ひとりになってみると、思いがけないほど、六畳のへやはひろく、快いものだった。彼の頭をおさえるものはもうだれもいない。彼はねこ背がのびるような大きな呼吸をした。
思うさま眠り、すきなものをたべて三日をすごすと、つかれのたまっていた兵六さんもすっかり元気をとりもどした。思うさまの眠りといったところで、六時にはもう目がさめる。すきなものを食べたといったところで、普通の飯をおかゆのようにやわらかくたくだけのこと、そのあたたかい飯にやっこ豆腐があれば、満足な兵六さんだった。このかんたんな好物を、昔は、おとうさんの世話なしといって喜んだ妻や娘も、今ではそうはいわない。
――貧乏性ね、おかゆに豆腐なんて、まるでおとうさんの性質そのままよ。たよりないったらありゃしない……