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ゆきのうえのしも
雪の上の霜
山本 周五郎
Read 雪の上の霜 (ゆきのうえのしも) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 25,586 characters · 50 screens
荷物を背負っていた少年の一人が、立停って、息をつきながら云った。
「ほう、坊や知っているのか」
「吉田から仲山まではね」と少年は額の汗を拭いて、「――馬も駕籠も、稼ぎに出ちゃいけないことになったんだよ」
「へえ、妙なことになったね、どうしてだい」
「出るとひどいめにあわされるんだよ、箕山のお侍たちにさ、おいらの父も、この吉べえの父も、ほかに三人もひどい目にあって、みんな家で寝ているよ」
「おらの父は腰の骨が抜けちゃったんだ」もう一人の少年がいった、「お医者にかかる銭もねえしよ、米を買うこともできねえし、それでおらっちが稼ぎに出ているだよ」
「とすると、しかし、それはへんじゃないか、どうしてまた侍たちが、そんな……」
こう云いかけて、伊兵衛はとつぜんぎょっとした。殴られでもしたように、左右を見まわし、低く唸った。すると、先に話しだした少年が、横眼でこっちを見ながら、
「そうだよ」
と云った。
「――小父さんのためなんだ、小父さんは善い人だって、父もみんなもそう云ってた、悪い人じゃないらしいって、でもよけいなことをしてくれたってよ」
「仲山の騒ぎのときのことか」
「いま小父さんが、荷物持ちしていたって云ったから、わかったんだ、騒ぎのときに黙っててくれればよかった、そのときの駄賃は損しても、こんな仇をされることはなかった、でも